GLOBAL SHIFT’s Blog

IT・WEBエンジニアのキャリア相談/転職支援サービス【TechLeadCareer|テックリードキャリア】(career.techlead.jp)を運営するグローバルシフト株式会社のブログ

日本のエンジニアの給料を上げるために必要な事

グローバルシフト代表の小川です。

「エンジニア*の給料上がらない問題」が話題となっているようです。

president.jp

*ここでは、日本のIT・WEBエンジニア、WEBアプリケーションエンジニア、ソフトウェアエンジニアなどの、IT系エンジニアを「エンジニア」として表記し、話を進めます。

IT・WEBエンジニア専門のキャリア相談・転職支援サービス ”TechLeadCareer” を提供する私たちも、この問題について考察してみたいと思います。 

 

日本の「エンジニア」の給料が低い、という意見の前提に関する考察

日本の「エンジニア」の給料を、中国の一部の超大手企業の「エンジニア」給与や、アメリカ国内の「エンジニア」と単純比較をする前に、比較の前提を整理すべきではないでしょうか?

  • 中国やアメリカの超大企業やユニコーン企業との比較

大前さんの記事で比較対象として挙げられていた中国の「ファーウェイ(華為技術)」や、優秀なインド人をヘッドハンティングする「グーグルやフェイスブック、Amazonなど」が、高い報酬で世界中から優秀な「エンジニア」を集めていることは事実です。

しかし、「給料が上がらない」と比較対象に挙がった日本の「エンジニア」というのは、本当に日本における「ファーウェイやグーグル、フェイスブック」に位置付けられる企業に所属する「エンジニア」なのでしょうか?

(とは言え、前述の外国企業の給料はかなり高騰していると思いますが...)

  • VCやエンジェルなどのリスクマネーの規模の違い

記事では言及されていませんでしたが、日本とアメリカで生まれるスタートアップ企業の数や、VCやエンジェル投資家からの資金調達規模の違いも大きな違いがあると思います。

近年では、日本のスタートアップでも数億円規模の資金調達は珍しくなくなってきたものの、アメリカのスタートアップと比較すると一桁、二桁金額が違いますし、スタートアップ企業の数自体が、その背景にあるリスクマネーの規模と比例して、日本とアメリカで大きな開きがあると感じています。

当然、資金調達金額の大きなアメリカのIT系スタートアップでは、初期の段階から「エンジニア」にも高い給料を支払う原資があるため、給料の差に表れるのではないかと思います。

  • 「エンジニア」が所属する企業属性の違い

日本とアメリカの「エンジニア」がそれぞれ所属する企業には、その属性に大きな違いがあります。日本の「エンジニア」は、受託開発企業に所属する割合が相対的に高く、人月単価の上限が給与水準を規定する傾向にあります。

逆に、アメリカでは事業会社に所属する「エンジニア」の割合が多く、グーグルやフェイスブックなど世界的に事業展開する巨大で高収益な企業が多いため、事業収益の規模や人材の需給バランスで「エンジニア」の給与水準が押し上げられていると思います。さらに、付加価値の低い業務はインドやフィリピンなど、英語圏の人件費が安い国にオフショアで業務委託するため、アメリカ国内の「エンジニア」の平均給与をさらに押し上げる要因になっており、企業属性を揃えた比較を行う必要があると思います。

  • 解雇規制の違い

日本とアメリカで比較した場合、日本は労働者が強く保護されており、昔から存在する企業では退職金制度も充実しているため、見えない報酬や採用ミスのリスク回避の観点から、相対的に給与が低く抑えられる傾向があると思います。

逆に、アメリカでは企業業績や景気の動向によって、比較的多くの雇用調整(レイオフ)が可能な環境であり、業績が良く成長の展望がある企業は優秀な「エンジニア」を、高い給料や福利厚生で積極的に採用しやすいため、単純な比較が難しいと思います。

※法規制・解雇規制の詳細なファクト調査は行っていないため、誤った認識があるかもしれません。その場合、ご指摘いただけると幸いです。

 

前提条件が揃えば、日本の「エンジニア」の給料も上がるのか?

結論から言うと、日本の「エンジニア」も給料上がります!

と言っても、まずは比較対象となる「エンジニア」の企業属性の絞り込みや、現在の日本のような正社員にとって安定した雇用環境を劇的に変える、という前提の話ですが...。

  • 比較対象とする「エンジニア」を都市部の事業会社だけに絞る

日本でも近年、空前の「エンジニア」不足の状況にあるため、事業会社における「エンジニア」の給与は上昇を続けていると思います。

恐らく、東京の事業会社に所属する「エンジニア」に絞れば、平均給与は600万円前後まで上昇するのではないでしょうか?

  • 解雇規制を緩和し、「エンジニア」雇用の流動化を実現する

解雇規制が緩和され、企業が雇用リスクを感じなくなれば、現在多くの事業会社で一般的に活用されている、社内常駐の業務委託エンジニアに支払うフィーと同程度の給料まで引き上げられる可能性が高いと思います。

月額60万円の委託費の場合:年俸660万円 = 60万円 x 1.08* x 12ヶ月 x 85%*

月額80万円の委託費の場合:年俸881万円 = 80万円 x 1.08 x 12ヶ月 x 85%

*消費税(1.08)、及び企業の社会保険負担率(15%)

つまり、アメリカと同様に雇用の流動化が進めば、理論上、現在の日本企業でも業務委託費用に近しい水準で報酬を支払うことが可能であると思います。(その分、レイオフリスクは当然高まります)

 

前提条件を揃えても、アメリカの3/4程度。日本の「エンジニア」の給料を、世界のトップ企業レベルまで引き上げるためには?

比較対象とする日本の「エンジニア」を給与水準の高い都市部の事業会社に絞り、解雇規制の緩和まで行っても、まだ日本の「エンジニア」の給料はアメリカの3/4程度までしかポテンシャルがありません。

では、どうすればアメリカや中国の超大企業やユニコーンに所属する「エンジニア」と、同じレベルの給料水準に引き上げることができるのでしょうか?

  • 海外と同様、海外市場を見据えたスタートアップの増加とそれを支えるリスクマネーの拡大

当たり前の話になってしまいますが、日本の「エンジニア」にも高い水準の報酬を支払えるようになるためには、それに見合った企業収益をあげる将来的な超大企業・ユニコーンが増加する必要があると思いますし、チャレンジする起業家を支えるリスクマネー・エコシステムの広がりも必要となるでしょう。

  • 付加価値の高い「エンジニア」の増加

付加価値の高い「エンジニア」の増加には、 2つの視点があると考えています。

一つは、既に現時点で十分な付加価値を創出しているにもかかわらず、正当に評価されていない「エンジニア」の評価を是正することで、付加価値の高い「エンジニア」を増加させる、ということです。

企業経営者や「エンジニア」の評価者にあたる人の技術理解度の問題で、あるいは「エンジニア」自身が、創出した価値をビジネスにおける価値に置き換えて説明できていないと言った要因で、正当に評価されていない「エンジニア」が日本にはまだまだいるのではないでしょうか?

こちらのブログでも、「エンジニア」が自分が創出した価値をビジネスにおける価値に置き換えて説明できていない、と言うことを非常に分かりやすく解説されています。

なにがエンジニア(の書くコード)の価値を決めるのか - NAEの仕事効率化ノート

 

もう一つは、現在の日本における「エンジニア」の中に、企業が求めるレベルでの付加価値の高い仕事をされている方がまだ少ない(と感じる)ため、付加価値の高い仕事の出来る「エンジニア」の数そのものを増加させる、ということです。

私たちは、IT・WEBエンジニア専門のキャリア相談・転職支援サービス ”TechLeadCareer” を提供しております。先ほど”空前の「エンジニア」不足”と記載したものの、有名企業や成長企業の「エンジニア」採用では、「エンジニア」であれば誰もが簡単に転職できるわけではない、という現実を日々目の当たりにしています。

これまでの日本では、受託開発を中心とした「相手の要望に沿ったシステムを作る」と言う仕事が多かったためか、事業会社におけるビジネスの戦略や目標を理解し、その実現や達成に貢献すると、という視点・姿勢を強く持った「エンジニア」の方がまだまだ少なく、世の中の需要に対して不足していると感じています。

最後に

いかがでしたか? 

もしあなたが、現状の評価が不当に低いと感じているようでしたら、一度 ”TechLeadCareer” に相談に来ませんか?もちろん、転職前提でなくてもOKです。

私たちは、付加価値の高いIT・WEBエンジニアを一人でも多く日本に増やすため、あなたのキャリアを徹底的にサポートします!

career.techlead.jp