経営者や事業責任者なら知っておいて欲しい、単価150万円と70万円のIT系エンジニアの違い
グローバルシフト株式会社、代表の小川です。
弊社のエンジニア・デザイナーの皆さんの働きで、なんとか直近のシステム開発プロジェクトも納期通りのリリースを迎えられそうなので、1週間ぶりにブログ更新します。
今回は、少し前のはてブで盛り上がっていた、以下の記事について考察して行きたいと思います。
*いつも通り、このブログにおける「エンジニア」とは、IT・WEB系の開発業務に従事されているエンジニアを指します。
件のつぶやきは何を伝えたかったのか?
オリジナルのTweetは、以下のように呟かれていました。
人月単価150万のところに出したらめちゃくちゃ優秀で仕事早くて半月で終わったんですよ。でも人月を単価が高いと内部から文句が出て70万のとこに変えさせられた。結果、半年かかるようになった。
— いりじうむ192 (@irid192) 2018年2月19日
価値云々というよりは、単価ベースになったら単価切り下げ圧が必ず発生する。それが調達部門の論理。ITの場合は単価がよりによって人月なので賃金が永久に削られ続ける。
— いりじうむ192 (@irid192) 2018年2月20日
概要は「人月単価150万円のエンジニアの方に依頼したら2週間で終わった仕事が、単価の高さを理由に調達部門から取引先の変更を指示され、変更した取引先の人月単価70万円のエンジニアの方は(恐らく)同じ仕事に6ヶ月かかった」という事かと推察されます。
【人月単価】: エンジニアの方と期間による業務委託契約した際の、一ヶ月あたりの費用。期間契約ではなく、成果物作成の請負契約の場合、人月単価を平均稼働日数20日で割った人日単価の場合もあれば、単発作業のためそれよりも人日単価が高額になるケースもある。
人月単価150万円のエンジニアの方が2週間で終えた仕事について、「75万円の費用で済んだ or 150万円の費用を払い残り2週間の仕事はなかった」の言及がないため正確な比較は難しいのですが、仮に前者だとすると「75万円/2週間 vs 420万円/24週間」と言う比較となり、恐らく小学生でも前者の人月単価150万円のエンジニアを選択するのではないでしょうか?
中立性を保つために補足をすると、Tweetを行なった方は以下のように注記を入れられており、現実には「75万円/2週間 vs 420万円/24週間」という単純比較ではない事も付け加えておきます。
”別ツイートでも言ってるけど、発注の継続性が安定したのでトータルコストが上がったとは言い切れないし、管理費やリスク考えると損とは言い切れないんだよ”
恐らく、人月150万円のエンジニアの方はフリーランスか非常に忙しい方で、いつも仕事の委託が可能なわけではなく、また大きな法人でないため取引の安全性も低い、と言うことが示唆されていますね。
多くのエンジニアが同意する「優秀と凡庸の間にある数倍のパフォーマンス差」
このTweetは非常に多くの反響を呼びました。
コメントの記載内容やそのニュアンスから、多くの方がエンジニアの方である事が推測されますが、大半の方が優秀なエンジニアとそうでないエンジニアとのパフォーマンスの差に共感を示すと共に、その事実に対する非エンジニア職種(決裁者や調達部門など)の理解の無さに対する嘆きにも似たコメントが多数寄せられていました。
私も上記について全くの同意見です。
ここで、私が上記のような意見となるきっかけとなった過去の体験を共有したいと思います。
【過去の体験】
概要: WEBアプリケーションの開発プロジェクト (私はOJTで未経験として参加)
状況: 業務委託の開発リーダーが顧客をファシリテーションできず、要件定義・基本設計で計画に対し3ヶ月遅延。計画上の開発フェーズ期間はテストを含め4ヶ月で、遅延を考慮すると残り1ヶ月しか残されていなかった。
結果: 当時の所属は大手企業で、社内向けの技術開発グループから優秀な若手エンジニア3名が火消し役として派遣された。まともな設計書もない中、ホワイトボードを中心に座席を配置し、大まかな構成と仕様をホワイトボードに記載。主要なクラス設計や共通モジュールの作業分担を口頭で行い開発着手、わずか3週間で開発完了。
所感: 初めてのシステム開発プロジェクトでしたが、一口にエンジニアと言ってもそのスキルやパフォーマンスに大きな差がある事を深く理解しました。
補足: 人月単価は、火消し役2名は若手のため150万円前後、もう一名はリーダークラスで200万円前後だったと記憶。一方、業務委託の開発リーダーは90万円前後でその他委託メンバーは70万円前後であり、今回のTweetのケースと比較的に近い状況だったと思います。
私が過去のシステム開発に纏わる仕事において、大きな失敗もなく進めてこられたのも、優秀なエンジニアがプロジェクトに与えるインパクトの大きさを、この体験から身をもって学んだからに他なりません。
なぜこの様な事が起きてしまうのか?
Tweetにも「調達部門」と記載がある通り、呟かれた方も一定の規模の組織に所属されている方かと推測されます。
調達部門などが出来ると、社内規程で「必ず3社に相見積りを行い、合理的な理由が無ければ低価格の取引先を選択」のようなルールが生まれ、ほぼ強制的に従わなければならなくなるのは容易に想像がつきます。
また、個別のエンジニアのコストパフォーマンスを合理的に説明出来れば良いのですが、そもそも決裁者が低コストを重視し過ぎていたり、調達部門がエンジニアの技術評価を適切に出来ない事がほとんどのため、発注を依頼するエンジニアの方の社内における発言力がよほど強くない限り、Tweetの様な不幸な出来事が生まれてしまうのです。
そして、その様な不適切な意思決定の影響を受けた社内のエンジニアの方のモチベーションが著しく下がり、いずれ退職してしまうであろう事も容易に想像がつきます…。
ではどうすれば良いのか?
この問題を解決する事は、非常に簡単です。
まず、自社のエンジニアの方の目利きを信じてあげて下さい。少なくとも、技術理解の無い経営者や調達部門よりは精度の高い選択をされるはずです。
自社にエンジニアや、技術の分かるスタッフがいない場合は、外部の方に技術顧問という形で、部分的に業務をアウトソースすると良いと思います。因みに、私たちグローバルシフト株式会社でも、技術アドバイザリーサービスを提供しておりますので、お困りの際は是非ご相談下さい。
また、初見の取引先・エンジニアの方の場合、期待した成果が上がらず選択を誤る事が、私たちも含め少なからずあります。
これは、一定程度発生する事は仕方がないのですが、この様な初見の方との取引についても、出来る限り小さくすぐに評価しやすいお試しの仕事を依頼してみて、本当に自社が求める取引先なのかどうかを判断してはいかがでしょうか。
最後に
いかがでしたか?
Tweetに対するコメントでも、現役のエンジニアと思われる方々から「よくある!」といった声が多かった事からも、多くの企業・開発プロジェクトで起きている事ではないかと思います。
もしあなたが経営者・事業責任者・調達部門担当者などの決裁者であったなら、このような事が過去に無かったか胸に手をあてて振り返ってみてはいかがでしょうか?